連載 第2回 2006年5月号

ニュースな、世界のカケラ! 〜各都市で今、話題になっているもの〜

いよいよ今回から、本格的な「コラム」が始まります。まずはウォーミング・アップがてら、各都市で今、話題になっているものを紹介します。スポーツ・天候のような大きなものから、ちょっとした気楽なハヤリまで、例によって、個性豊かなライターたちが個性豊かなネタを用意しております。ゴールデン・ウィークが終わり、各メディアが次のニュースを探している、そんなタイミングでのご提供です。世界のニュースを、お届けします!

一級建築士事務所 スタジオOJMM
代表 牧尾晴喜



日食は世界の終わり!?

澤恵子
ガーナ
アクラ
アフリカ大学院留学記
 先日、3月29日午前9時頃にガーナは「皆既日食」を迎えました。
都会ではテレビやラジオが普及し、日食というものをガーナ人も理解はしていますが、わかっていてもそれを気味悪がるガーナ人は多く、知人の家で働いているメイドは「マダム、私は日食の間は家から出ませんから」と宣言し、日食によって何か災いが墜ちてくると信じていたそうです。
 私はキャンパスで友達と観測をしていたのですが、太陽が少しずつ月に覆われて暗くなってくると、あちこちから叫び声が聞こえてきます。完全に重なっていたのは3分程でしたが、それまで明るかった太陽が消え、夜の闇が一瞬で辺りを包み込み、月からはみ出した光の輪が光りを放ち、信じられないような神秘的な雰囲気でした。完全に月が重なると学生みんなが叫ぶ、歌う、踊る、太鼓を叩くの大騒ぎで、興奮した男子学生は集団でグラウンドをぐるぐると駆け回るという半狂乱状態になりました。なんでも電気がない村で、科学的な情報もなく、ただ日食を迎えた農村の人々は「巨大な力を持つ呪術師が太陽を消したぞ!世界は破滅する!」と大騒ぎをしたそうな。
なんとも素朴なガーナ人らしい反応にウフフと笑ってしまった「日食騒動」でした。



女王の日:全国フリーマーケット・デー!


松野早恵
オランダ
ユトレヒト
新緑の季節、オランダでは、大人も子供もそわそわと4月末のお天気を気にし始めます。皆のお目当ては、『女王の日Koninginnedag(ユリアナ前女王の誕生日、例年4月30日)』。この日、全国でフリーマーケットが開催されるのです。ユトレヒトのマーケットは、商売というより、家族や友達と出店するのが楽しい!という人が多く、アット・ホームな「がらくた市」といった趣。シートや毛布の上に本、食器、ぬいぐるみなどを並べて、子供たちが元気にお客を誘います。ちなみに、今年、私の掘り出し物は、油とお酢の卓上容器。二つで50セント(約70円)でした。
買い物のほか、マーケット会場、Vogelenbuurt(鳥地区)での散策も楽しみの一つです。このエリアでは、19世紀の低層住宅が今でも丁寧に使い続けられていて、『カッコウ通り』、『ツグミ通り』といった街路を歩くと、街並みを彩る花や、古い給水塔が見渡せる運河沿いの眺めの美しさに、ハッとさせられます。
そして、夕方。祭りの終わりは寂しさが漂うのかと思いきや、店を片付ける人たちは、夏の休暇について話を咲かせていました。目いっぱい遊んだ後は、さっぱり気持ちを切り替える。『女王の日』を経て、ユトレヒトの町は、初夏の到来を心待ちにしています。



赤ちゃんもジョギング!?


Baby Jogger Australia
より抜粋

寺西悦子
オーストラリア
ブリスベン
オーストラリアの流行りモノといえば、“スポーツ”に勝るものはないのではないでしょうか。テレビ番組では、いつもどこかのチャンネルでスポーツ中継をやっています。ラグビー、サッカー、クリケット、テニス・・・。私の通う大学のキャンパス内にも、7つの大きなグランドがあり、30種目以上のクラブがあることからも、いかにスポーツが盛んに行われているかが伺えます。私もジョギングをしているのですが、ある日、朝6時に川沿いにジョギングに出た時のこと。そこは人・人・人。人の渋滞です。中でも、ベビーカーを押しながら、ジョギングしている人に、最初は驚きました。このような光景は、オーストラリアで初めて目にしたからです。そして、普通のベビーカーと思っていたら大間違い。「Baby Jogger strollers」(赤ちゃんジョギング専用乳母車)なるものが存在。この赤ちゃん、大きくなったらやっぱりランナーになるんでしょうか。
他には、サイクリングをしている人、ブリスベン川で、ウェイクボード、ジェットスキー、カヌー、カヤックをする人。そして、朝だけではなく、日中も、夜も。ここブリスベンでは、外に出てスポーツをしている人に遭遇しない日はありません。



イタリア最新トレンド 〜悩ましきエキゾチシズム〜


野村雅夫
イタリア
ローマ
大阪ドーナッツクラブ
ローマの冬。今シーズンは竜頭蛇尾だった。年が明けてからは小春日和も多く、人々が着込む防寒具も一気に丈が短くなった。そんな中、若者を中心に、ある派手なジャンパーが大流行した。モデルはいろいろとあるが、共通した特徴はそのプリントにある。ハングルとも漢字ともカタカナともつかない謎の文字が所狭しと躍っているのだ。友人のイタリア人も一張羅のジャンパーを僕に見せつけ、「これ日本語だろ?何て書いてあるの?」と鬱陶しい問いをぶつけてくる。正直に答えれば彼らががっかりするし、いちいち適当な嘘をでっち上げるのも面倒だ。どうしたものか?ちゃんとした文字でちゃんと意味のある言葉をプリントすればいいだけのことじゃないか。気づけば僕は、怒りの矛先を製造元にシフトしていた。
そんな心ある日本人の無言の願いがメーカーに届いたのか、春が冬を迎えに来た頃になって、僕はついに解読可能なジャンパーを発見した。筋骨隆々とした男の背中一面に漢字が三文字、堂々とした刺繍であしらってある。 「冬道楽」 確かに間違いではないが、そんなことを声高に言われても困る。もやもやする僕を尻目に、男は去り行く冬をどこまでも満喫しているようだった。




大歓声


ユゴさや香
ドイツ
フランクフルト
土曜の午後。隣の老夫婦、階下の独身男性、上の家族、それぞれの家から同時に「おー!」と歓声が響く。そう、皆サッカーBundesliga中継を見ていたのだ。今のドイツを語る上で欠かせないのが、6月に開催されるサッカーワールドカップ。
皆はW杯と聞くと何を思い浮かべるだろう?ドーハの悲劇、日韓共同開催。ドイツ人に同じ質問をすると異なる答えが返ってくる。
第二次世界大戦中のヒトラーの独裁、そして敗戦。ナショナリズムに対する罪悪感と自信の喪失。そんな戦後のドイツに本当の意味での復興をもたらしたのは、他でもないW杯だった。1954年スイス大会。マジックマーシャルと呼ばれる強豪ハンガリーを下し、西ドイツが優勝。スポーツという平和的手段で、なおかつヒトラーとかかわりの深いオリンピック以外での世界大会での優勝は、戦後のドイツ人に再び夢と希望を与えたのだ。
あれから50年余り。サッカーは依然国民的人気を誇る。そんなサッカーW杯のドイツ大会。ブンデスリーガー中継の歓声とは比べものにならないくらい、大きな歓声が街中を包み込むことだろう。




2007年W杯はインドに優勝を


クリケットのインド・ナショナルチーム主将ドラヴィド。インドでは、クリケット選手は映画スターなみの人気。

豊山亜希
インド
ムンバイー
(旧名ボンベイ)
冬季五輪にWBC、サッカーW杯とスポーツイベント目白押しの2006年という空気は、インドには全く流れておらず寂しい限り。なぜならインドで断トツ人気のスポーツはクリケット。イギリス発祥の野球の原型のような球技で、旧英植民地の多くの国ではサッカーに劣らぬ人気です。特に南アジアでは、隣国間に特有の国民感情に加えて実力も拮抗しているので、対パキスタンなど国別対抗戦の視聴率はインド国内で80%超とか(8億人が一斉にテレビにかじりつく計算)。そんなインドでW杯といえばサッカーよりクリケットで、来年開催の西インド諸島大会に向け機運も高まっています。そこに最近「2016年夏季五輪開催地に首都デリーが立候補」のニュース。クリケットは国民的スポーツだけど、より全世界的なイベントを誘致してインドの存在を国際社会にアピール、そんな政府の思惑が見え隠れします。しかしクリケットと五輪に対する国民の関心の差は、「8億人テレビ視聴VSテレビ放映なし」という事実が歴然と物語っています。これまでイナバウアーも「チョー気持ちいい」も、インドにいたが為に見逃してきた日本人としては、誘致計画の行方に興味津々です。





Simon Nettle
日本
大阪
My Amazing Life
The days have finally started to warm up end everyone is emerging from their winter cocoons, or at least I am. We couldn’t have hoped for nicer weather this Golden Week, and I am taking every measure to stave off 五月病.
By most measures, no one would ever class me as a die-hard sports fan, but one event that does capture my heart every four years is the Soccer ワールド・カップ. This time around, miracle of miracles, オーストラリア has made the cut into the finals. Usually, I am forced to defer to my ancestral heritage and support イタリア, and since it's always fun to support an underdog, and simply because they try so very hard, 日本. This time around I will finally be able to kill two birds with one stone and put my prayers behind a team that probably won't make it past the first rung.
I have also pre-empted my inevitable impulse and purchased a soccer ball before the finals begin. The marketing has also started, and as you may be able to see in my picture, Adidas is using a very appropriate slogan for this occasion “Impossible is Nothing”. I’d love it if Japan (or Australia) accomplished the impossible this World Cup season, and what better frame of mind than the denial of the impossibility of it all to rally our emotions as we cheer our teams into the finals.




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