2007年度 第6回 都市の速度 〜各職能活動における時間的サイクル〜

コラム第6回、前半最後のテーマは、『各職能活動における時間的サイクル』です。

多様な職能活動のサイクルからは、ますます加速している、都市のスピードが読み取れるのではないでしょうか。何物をも飲み込み、さらに肥大化を続ける都市において、その空間的特性と同じく、時間的特性も多様化しています。その巨大さ・多様性ゆえに、建築家コールハースの言葉を借りれば、「建築はスローなものだが、都市は変化に対応する」ことができるのでしょう。

今回のコラムも、都市における多様な職能の一端に関するエピソードを、お楽しみください!

スタジオOJMM (設計・研究・翻訳)
代表 牧尾晴喜




 世の中のサイクルを眺めるメンバー

 Watching the wheels...

初対面の人に自分の仕事をかいつまんで説明する必要に迫られることがよくある。これがなかなか難しい。私なりにそれなりにポイントを整理してお伝えして、そのときはふんふんと頷きながら耳を傾けてもらえるのだが、小一時間もすると、「で、雅夫さんは何をなさってるんでしたっけ?」とか、酷いときには「雅夫さんって何でしたっけ?」と言われる。流石に滅入ってしまうが、考えてみるとこれも致し方ないことなのかもしれない。ODCの業務自体が割と多岐に渡っているせいで、一歩具体的な領域に足を踏み入れると、話が途端に込み入ってしまうからだ。文章の執筆、文芸翻訳、映画字幕制作、映画館や出版社等への営業活動…。項目はざっと十にも及ぶから、聞き手が混乱するのも已むを得まい。
為すべきことが数多あるのは喜ばしいことではあるが、おかげで我々には定期的な休日というものがない。休もうと思えばいくらでも休めるが、それではにっちもさっちも行く筈もなく、業務はこれ須く自己管理すべきものとなっている。我々ドーナッツメンバーは、今のところ世間のサイクルを外から眺めつつ、ドーナッツのサイクルが独りでに回りだすようにと大車輪で働いている。

 

野村雅夫
イタリアの文化紹介
大阪/ローマ
大阪ドーナッツクラブ




 日々の繰り返し 大切をきずくもの

私の一日。常に口が動いている。おはようで一日が始まりおやすみなさいで一日が終わる。誰かと話すことで一日がまわってゆく。お客さんと店のスタッフと友達と家族と。寂しさを感じることの多い世の中ほんとに恵まれた仕事につかせてもらったと思う。
朝常連さんがモーニングに来てくれる。たわいもない話で笑う。昼近くで働く方が多く午後からも頑張ってくださいねと見送る。夕方歳の近い常連さんや友達と話し込む。お互いの近況報告から悩み相談になったり時に深い話もする。閉店後大好きなカフェに行ったりする。自分がお客さんになって話を聞いてもらう。そんな風にして一日が終わる。そしてそんな一日が毎日繰り返されRcafeにいる生活というものが出来上がる。
しかし繰り返しの毎日だけれど話す相手が違うので繰り返しながらも同じ日には絶対ならない。だから日々が愛しくてたまらない。人と接することで辛くなることももちろんあるし、私は人が大好きなんですとはもちろん言えない。それでもやっぱりやめられなくてただ珈琲をいれるだけでは満足できないみたいだ。その先にいるさまざまな人という存在に接しないわけにはいかなくて、私の中のカフェをするという仕事の意味はそこにあるようだ。

 

 

藤井 有美
カフェ
大阪・中崎町
R cafe



 サイクル

古本屋さんは「待つ仕事」です。本を買ってくれるお客さんはもちろんですが、お店に並ぶ商品の本も、お客さんに売りに来てもらえるまで待つものなので、基本はコチラから探しには行かないのです。ですから、すごくサイクルが長いです。長すぎてサイクルなのかもわかりません(笑)。もしかしたらこんなサイクルなのは古本屋でもメガネヤだけかもしれません。
本がサイクルするのと仕事がリンクしているので、仕事に関わる一日や一年という感覚は今は薄いです。 終わり無く、いつが始まりだったかも分かりにくいです。
ちなみに大型古書店ですと、新生活前の引越しシーズンの3月末と大そうじの年末が忙しいです。売れる時期よりも買取りの時期が忙しい時期です。扱っている本に自分が振り回されているようで、非常に疲れる時期なのでよくピリピリしてました。今、思い出してもピリピリします。
ただ、大きなお店での仕事から離れピリピリしなくてもよくなったので、季節の行事に敏感になりました。仕事、仕事と後回しにしていましたが季節の行事は楽しいです。あまりユルてもいけないと思いますが、もうしばらくは浸っていたいです。

 

 

市川ヨウヘイ
古本屋
大阪・京橋
古本屋メガネヤ(地図)


 完了期限に追われるNGOスタッフの日常

国際協力の世界では、しばしば助成金を使ったプロジェクトが実施される。助成金は国や地方自治体が提供している場合もあるし、企業からの場合もある。会費と寄付が主な収入源のNGOにとって、助成金は充分な活動資金を確保する上でとてもありがたい存在だし、必要不可欠といえるかもしれない。
注意点は、例えば井戸を掘って水を確保し、20ヘクタールの畑を作る、というプロジェクトを1年でやります、という計画で助成金をもらったなら、絶対に1年で終了しなくてはいけないこと。これが口で言うほど簡単じゃない。井戸のポンプが壊れて水が出ない、村で頻繁にお葬式があるため、農民が畑作業に決められた日数来ない等々、問題は次々出てくる。
私たちは当初の計画より大幅に遅れている現状と予定表をにらめっこしながら、どこでどうやって帳尻を合わせるか?と頭を悩ませ、現場と事務所を往復する日々を送る。土曜も日曜日も関係なく、仕事をすることもしばしば。
でも無事にプロジェクトを終了したあかつきには、20日、30日といった単位で、休暇を満喫できるという特典もある。この長期休暇の間に日本の生活と食事を満喫し、エネルギーを蓄えて、また現場に戻っていく。

 

 

西口 三千恵
国際協力
ザンビア/徳島
NPO法人TICO


 バタバタな毎日

「今週の土曜日って暇?」「う〜ん…わかんねぇ」というのが、いつもの僕。始業時間は毎日同じでも、終業時間はバラバラなのが常。もちろん仕事が忙しい方なら当たり前の事でしょうが、特に放送業界は生活のリズムが定まらない職業のようです。特に、ラジオとなると単価が安い分だけ作業の量が多くなってしまいます。生活していく為に必要なお金は、周囲の人と同じハズなのに切ない話です。
まだ放送局に入りたての頃、お師匠様に「親の死に目も、子供が産まれる時も一緒にいれないかもしれない仕事を本当にやりたいのか!?」と言われて素直に良い返事していましたが、まさか本当にそんな仕事だとは当時は思っていませんでした。クリスマスやらバレンタインやらイベント事の際には、当然ながら司会や特別番組が組まれて休めません。年末はゆったり…何て話をラジオで言いながらも、「そんなの関係ねぇ!」を頭の中で連発するしかないのです。
テレビ局でギャラの良い仕事をやるならまだしも、ラジオで食べていこうというのは本気で好きでなければ出来ない仕事なのかもしれません。年中バタバタ。僕のサイクルです。

 

 

中村 謙太郎
インターネットラジオ
大阪・新世界
インターネットラジオGood-AIR !



 自分のリズムで仕事するしあわせ

もしかして私は規則正しい業務をこなす仕事には向いていないのでは、と感じることが会社員時代にはよくあった。しかしそんなことを言っていては社会人失格、ひいては人間としてダメすぎる。仕事も会社も好きなのに、生活のサイクルだけがうまく行かない。ところが完全にフリーランスとなった今、生活サイクルの点は問題無しになった。徹夜で2日続けて働いて丸1日休むのも、半日ずつしか仕事をしないのも自由。心の底から、独立してよかったと思える瞬間だ。
フリーランスとして個人で少量の案件を引き受けていると、仕事量が安定しないことも多い。忙しいときに限って発注が多く泣く泣く断る羽目になり、暇になると思い切り閑古鳥が鳴く。これを1週間や1か月単位のサイクルで見ると不安になりがちだけれど、いっそ1年サイクルで見てしまえばそんなに気にならない。この1年のサイクルを小さいスケールに換算すると、仕事があるときは休みを取らずに働き、ないときはのんびりと本など読んで過ごすという1日のサイクルにも通じている気がする。自分のリズムに合った形態で仕事ができるこの生活、健康管理の面では実はあまりよろしくないことに薄々気づいてはいるが、精神面にはとてもよいので、当分変える気はない。

 

 

山本真実
ローカリゼーション
大阪・南森町
クリエーター自主運営 ワークルーム208


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学芸出版社(受付に設置)


ブックカフェ ワイルドバンチ
-ist零番館
CAFEマーボロ (住所:大阪市旭区千林2-14-9 TEL: 090-5645-2182)
モンタージュ

R cafe
古本屋メガネヤ
大阪ドーナッツクラブ
クリエーター自主運営 ワークルーム208




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